tsuki.s

2025/05/16 09:49

私にはヴェネツィアにイタリア人の友がいます。シチリアの村で出会い波長が合っ た私たちは、たちまち仲良くなり、以来、ヴェネツィアに行った時は胸はずむ、お もてなしプランで楽しませてくれています。

 数年前の想い出。その頃、彼女は仕事をしながら高齢のお母様の世話をする為、 毎週末、時間をかけて山間にある実家に通っていました。

フィレンツェでの所用を終えた私は、途中駅で彼女と落ち合い、北イタリアの湖畔 にある小さな村テンナに向かいました。

まさに相乗りの旅です。

彼女が育った山の家は所々、シックでエレガントな鉄の細工がある素朴な土壁家屋 で、中庭の大きなサクランボの木を囲むように建っていました。まるで昔のシネマ を彷彿させるノスタルジックな情景に私は感動し、涙ぐむ日々を過ごしていました。 尾根沿いの山歩き、カウベルの音、散歩の途中のダイブ、掬った手の中の透き通っ た湖水、すべてのシーンが昔どこかで見たような懐かしい気持ちを呼び起こしてくれたのです。


そして滞在中、遠く日本から来た娘の友のために、90 歳のマンマは おしゃれをして、一度だけ夕食に参加してくださいました。娘はそのテーブルに細 かいクロスステッチ刺繍が施されたマンマ手作りのテーブルクロスをさりげなく掛 けていました。少女のように想い出を振り返りながら語る、マンマのマンマに教わ った根気のいるクロスステッチの話、山で暮らす家族の話、そして小さい頃の娘の 話。幸せを語る笑顔は大きな旧家とともに生きた女性の凛とした美しい姿でした。

 大切にしている美しい道具の一つ一つがレトロで現役。心を込めたモノの尊さ。 マンマのたからものは娘の誇り。娘のおもてなしは母ゆずりで納得など。

 あいのりしたタイムトリップは忘れていた心のリセットになりました。

 作り手としても忘れてはいけない大事なことですね。

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