tsuki.s

2023/07/20 17:34

私は10代の終わり頃、池袋にある美術予備校に通っていたので、帰りに池袋西武に入っていたリブロという本屋さんに行き、画集を立ち読みしたり、面白い本はないかと常にアンテナをはって毎日のようにパトロールしていたのですが、その時なんとなく手にとった本にアゴタ・クリストフの「悪童日記」という本があります。


それは本が好きで幼い頃から様々なジャンルの本を読んできたはずの私にとって初めて感じた読書体験で、一瞬で読み終わってしまったにもかかわらず、ずっと頭の中がその物語の世界を漂っているような感じで、一週間はその世界にいるような感覚でした。
その体験が忘れられず、同じ著書の本を探し「悪童日記」が三部作で書かれたものだと知ると、わくわくしながらその続きともいえる本を購入し読んだのですが、本は面白かったのですが、思っていたような体験は得られませんでした。
また同じような体験をしたいと思い、この本を忘れた頃にまた読んでみようと、それからずっとその本は手にとっていません。

けれどこの読書体験を得られたのは、この作者がどういう人物であるとか、これがどういう話であるかとかを知らず、物語を純粋に19歳の自分の体験として得たものだからなのかなと思います。

ジブリの「君たちはどう生きるか」もそういう映画ではないかなと思いました。物語の力を感じるそんなプリミティブな力を感じました。ジブリの作品であるとか宮崎駿監督であるとか、そんな情報すら観るものにとっては雑音だと思います。
また、自分がいかにいま情報に汚染されているということにも気づき、もっと純粋に色々なことを体験し、楽しみたいと思いました。

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